お前の妹は預かった。返してほしければ、 この地図にある"塔"までやって来なさい。                 〜K〜  そんな置き手紙だけを残し、俺の妹である 麻美はどこかへ消えてしまった。  両親を早くになくした俺たちは、互いに助 け合って今日まで生きてきた。  かけがえのない、たったひとりの肉親。  そんな麻美を取り戻すために、俺は迷わず 地図にあった"塔"へとやって来た。  そこで俺を待っていたのは、謎の女による 宣戦布告だったのである。 「妹さんを返してほしかったら、最上階の私 のところまで迎えに来なさいな?」  ただし、と女は付け加える。 「各階の階段は、私のかわいい恋人たちが守っ ているわ。彼女たちを麻雀で負かして、隠し 持っている鍵を手に入れないと、上の階には 登って来られないわよ」  俺は悟った。この女は麻美を賭けて、俺に 勝負を挑む気なのだ。  だが、なんのために? 答えは、聞こえてきたせつない声だった。 「ああぁぁ……イヤ、やめてぇぇっ」  消え入りそうな、恥ずかしげな麻美の声。 「うふふふ。かわいい妹さんよねぇ。このま ま貴方が来る前に、食べちゃおうかしら?」  その意味を理解した瞬間、俺は決意した。  得体の知れないこの女の毒牙から、絶対に 妹を救い出してみせる……と。  塔を登る俺へと挑む各階の番人たち。  "百合十字会"という名の下に、彼女たち は塔の女主人に忠誠を誓っていた。 (一体、ここはどうなっちまってるんだ?) いまだわからぬ、謎の女の不気味な思惑。  そんな彼女の仕掛けたこの麻雀遊戯に、俺 はそれでも挑み続けねばならないのだ。 (最愛の妹を、救い出すまでは!)  強い決意を胸に秘め、俺は7階へと進む。  負けるわけには、いかないのだ。